【2017.12】インプラントのさらなる進化 プラットフォーム・スイッチングシステムとは
インプラントの治療は現在、難症性も含め、さまざまな症例に対応できるまでに進歩を遂げてきました。
その研究・開発は現在も行われており、より確実で安全性が高く、患者さまの負担の少ない治療を目指して、インプラント本体のミクロン単位での研究・開発をはじめ、さまざまな装置や機材、薬剤などの改良、改善が続けられています。
そうした研究・開発の一つの成果として、“プラットホーム・スイッチング”というシステムが世に出て、注目を集めています。
インプラントは主に3つのパーツからなり、人工歯根となるフィクスチャー、上部構造(人工歯)、そしてこの2つをジョイントするアバットメントです。このアバットメントとフィクスチャ―の接合部分のことを“プラットフォーム”といいます。
従来のインプラントの形状では、このプラットフォームの部分 (フィクスチャーとアバットメントとの接合部分) において経年的に骨の吸収が生じやすいということがいわれていました。
この課題をアバットメントの外径をフィクスチャ―より一回り小さくすることことで解決したのがプラットフォームスイッチングのシステムです。
プラットフォームスイッチングではインプラント本体とアバットメントの接合部でくびれができるのですが、このくびれによって、従来のインプラントにはないスペースができ、ここが粘膜で覆われることで歯肉の厚みが増えます。この歯肉の厚みによって血流量も確保でき、歯肉の退縮が防止できるといわれています。
従来のインプラントでは、インプラント周囲の骨が数年で約1~2㎜吸収されるといわれています。骨吸収に伴い歯ぐきが退縮し、アバットメントが露出するなど審美的な面での問題を指摘する声もありました。
こうした問題点を解決できるというので、このプラットフォームスイッチングのを採用するメーカーが増えています。
今後も、骨吸収を防ぐための形状の追求に各社がしのぎを削っていくことになると思います。
ちなみに、このプラットフォームスイッチング・システムの開発は、ある研究者のうっかりミスが発端でした。その研究者は間違ったサイズのアバットメントをフィクスチャーに取り付けてしまったのですが、数年後、レントゲンをで観察すると、正しいパーツをつけたインプラントでは骨の吸収が起こり、間違ったパーツの方は骨の吸収が起こっていなかったのです。
こうした偶然の発見が大きな成果につながっているのですから、わからないものです。
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